ただでさえ忙しい年末に申し送りやら忘年会やらをこなして冬休みに突入。アフリカへの出発は1月5日なので、それまでは年始回りや新年会といった通常の正月を過ごす。
で、いよいよ出発の前日となった。荷物のチェックや酒を飲むといった重要な仕事をしていた夜8時ごろ、電話が鳴った。妻が出ると、
「はい。はい。え。そうですか。わかりました。」
などと端で聞いていると意味不明の受け答えをしている。旅行会社からだそうで、
「あのね、明日の飛行機、出発が3時間遅れるんだって。」
「なんで」
「よくわかんないけどインドを出るのが遅れたみたいよ。」
ふむ。良くあることだ。
「あいわかった。本来ならば明日の昼12時発が午後3時になると。まあ良いではないか。急ぐ旅ではなし。」
本当は11日間しかないのだから急ぐ旅なのだが、この頃はまだインドを甘く見ていたのである。
「明日朝一番で成田エクスプレスの指定券を換えてきなさい。」
と鷹揚に答えてその夜はさらに酒を飲んで寝てしまった。翌朝、乗車券を書き換えた妻が戻ってくるとまたもや電話。
「はい。はい。え!!」 夕べとは声のトーンが若干違っている。
「あのね、もう3時間遅れるって。」
ううむ。
「指定券の書き換えは1度だけだろ。このまま行くかキャンセルして買いなおすか。」
「今成田へ行っても5時間近く待つわよ。ここから1時間ちょっとで行くのにばかばかしいわよ。」
もっともである。妻は再び緑の窓口へ向かった。しかし、2度あることは3度あるのである。またもや電話。
「また2時間遅れるって」
これで都合8時間遅れになった。午後12時発が午後8時発だ。もはや切符を買い替える気力もなく、妻と私は成田エクスプレスに乗り込んだのであった。
空港についたのは午後4時であった。飛行機の遅れに合わせて列車の時刻を変更したのは6時間遅れまでなので、本来は6時発の2時間前でドンピシャリの筈があと4時間も待たねばならぬ。
仕方がない、とりあえずチェックインしようとカウンターへ行くと誰もいない。ならばとすぐさまビールを飲んで軽い食事を済ませて再びカウンターへ。今度はきれいなおねえさんがいた。しかし、しかしである。チケットを見せると、
「すみません。この便は午後10時発の予定になりました。」
が〜ん。何ということだ、あと6時間近くもあるではないか。
「申し訳ございません。こちらのミールクーポンでお食事ができますので・・・」
といってお詫びのしるしをくれたがこちとら既に腹は減っていない。が、断る理由もないので有り難く頂いてさらにめしを食う。
それからしばらく我々は成田空港難民となりあちこちふらついたが、実はこのあと様々な、というよりは立ち寄る全ての空港で難民と化すことになるのである。
インドもアフリカもやはり侮れないのであった。
そして午後11時、さらに1時間遅れて出発予定の11時間後に飛行機は飛び立った。
航空会社の名前は、エア・インディアである。