休日も働くおまわりさん

3日目は、朝食後すぐに移動。次なる目的地はアバーディア国立公園。来た道を戻りナイロビを通り越してさらに北に向かう、約400Kmの道のりである。

信号など殆どない直線道路なので、ワンギさんはそりゃもうすごい勢いで飛ばす、飛ばす。こんなに飛ばして大丈夫なのかと思っていたら、案の定ねずみ捕りに引っ掛ってしまった。スピード計測機は使っていないが、どこへ出しても恥ずかしくないスピード違反である。道の左側に寄せて停車させられた。(ケニアは日本と同じ左側通行)

ワンギさんは素早く車を降りて初老の髭を蓄えた警官のもとへ走って行き、なにやらひそひそ話していたかと思うと5分程で戻ってきた。

「どうしたんですか」

ジョージさんに尋ねると、ふたりのスワヒリ語の会話の後、

「あのおまわりさんにお金をあげて許してもらいました。彼らは、今は仕事ではなく個人で取り締まりをやってます」

うーむ、これはジョージさんの日本語変換エンジンが誤動作したかなと思ったが、

「300シリングを200シリングに値切りました」

との追加報告を受けて事実であることが判明した。ケニアではたまにあるそうで、引っ掛る方が運がないと諦めるらしい。それとも私がかつがれたのかしら。

その後は順調に捕まる前と同じ速度でひた走り、5時間ほどでアバーディアに到着。ここでではツリートップスに泊まる予定だ。

このロッジは、部屋や廊下の造りが非常に狭く、スーツケースは持ち込み禁止である。一旦公園近くのホテルに荷物を預け、1日分の手荷物だけを 持ってロッジに入らなければならない。(ここは連泊できない)

どのくらい狭いかというと、部屋にはシングルベッドが2つ、その間隔は45Cmほどしか空いていない。ベッドの頭側も足側もすぐ壁だ。

廊下は体を横にしないとすれ違えないくらいの広さしかない。トイレとシャワーは共同。木造建築なので、隣の部屋の話し声どころか、上の階の部屋の声まではっきりと聞こえる。

それでもここは人気がある。なぜなら、ここは集まってくる動物達を部屋から見られる、いわゆる「居ながらサファリ」が楽しめるからだ。夜も一晩中照明がついていて、夜行性の動物達も見られるようになっている。頼んでおけば、お目当ての動物が現れたときに起こしてくれるサービスもしている。

我々も素早くチェックインを済ませて部屋へ入る。やっぱりせまい。しかし、部屋も共同トイレも清潔で気分は非常に良い。さらに良くするためにラウンジでビールを飲むことに決定し、行ってみると既に満席に近い。のんべぇはどこにでもいるもんだと感心しながら、私もタスカーを飲んだ。

ロッジの外には既に動物達がきており、池の水を飲んだり撒かれた塩を舐めたりしている。屋上が開放されているのでそこにカメラを持って上がり、ビールからワインに切り替えて写真を取りまくる。

やがて夜になった。まずは夕食をとってから、ブランデーなんぞを飲みながらゆっくりと動物を見ることにする。どうにもスノッブだなぁ。

食事はレストランでとるのだが、なにせ造りが狭いものだから、皆相席である。長テーブルが縦に2列、幾つか並んでおり、人が座るとその後ろはひとり通るのがやっと、といった格好になる。

テーブルも変わっていて、真ん中に端から端までレールの上を移動するお盆が付いている。給仕さんはそのお盆の上に料理をのせ、お客は端から順番に自分の分をとり、お盆を隣の人まで動かしてやるのだ。要するに人力の回転寿司である。いや、往復洋食か。

しかし、料理はちゃんとしたコースでなかなかおいしかった、と記憶している。食後、ブランデーを持って再び屋上へ。ラウンジからも見られるが、屋上の方が快適だ。そう、バカは高い所が好きなのだ。

その夜は窓から聞こえる象の鳴声を聞きながら眠った。

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