97年1月後半

ゴエモンがあまり動かなくなった。餌の時間が来ると、足にまとわりついて鳴きながら催促をし、実際にも旺盛な食欲をみせるのだが、それ以外はソファの上で丸まって眠りこけるようになってしまった。

去勢をした猫は歳をとってもじゃれるという行為をするが、ゴエモンはどちらかと言えばあまりじゃれない猫であった。反対にピーターは今でも猫じゃらしに体ごとぶつかって行くような猫だ。見ていて心臓発作を起こさないかと心配になる程である。

昔から昼寝を決め込む方が多かったゴエモンだが、今では殆どソファから降りようとしない。下顎の膨らみも随分大きくなってしまった。うまく口を閉じられないので、いつも舌を少しだけ出している。事情を知らない人には、とても可愛らしく見える表情だろうが、こいつにそんな愛嬌はもとからない。

よだれも垂らす様になってしまった。ソファにタオルを敷いて、好きなだけ垂らせるようにしてやる。妻は、気が付く度にティッシュで口を拭っている。自分でも気になるのか、頻繁に顔をブルブルと振ってよだれを撒き散らす。

口元のキリリとしまったハンサム猫(欲目220%)だったのに、閉じられない口から舌を出してつらそうにしているいるゴエモンを見るのは忍びない。しかし一番つらいのはこいつだろう。

動物は自分の苦痛をあまり訴えないので、見ているこっちの方がかえってつらくなる。一体こいつは今自分に起こっている体調の変化についてどう思っているのか訊ねてみたいが、私はドリトル先生でもないし、ソロモンの指輪も持っていないのでどうしようもない。

病院へは血液検査以降、連れて行っていない。たとえ連れて行っても、口内洗浄ぐらいしかすることがないのだ。先生からも、餌を食べなくなるとか、よほど様態が悪いようなら来て下さい、と言われているのでしばらくは自宅療養である。

それにしても我が家のリビングはゴエモンのよだれでデロデロだ。これから遊びに来る方は汚れてもいい格好で来て下さい。

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