97年3月後半

ゴエモンの顔の変形が甚だしくなった。下顎の膨らみは全体に広がり、今やピーターの3倍はあろうかという有様だ。加えて上顎も左側、鼻の横あたりが陥没している。正面からゴエモンの顔を見ると、飼い主以外の人間は決して近づく気になるまい。その顔はまるで新森のようだ。(註:新森は私の古い友人)

先日の出血はひどかった。どうやら出血したまま前足を舐め、それで顔を洗ったらしく、ゴエモンの顔全体が真っ赤になっている。ちょっと目を離した隙のできごとで、発見したときに思わず「ぎゃあ」と声を上げてしまった。いかにスプラッタ猫に驚いたとはいえ、飼い主にあるまじき行為だったと反省している。

当然部屋中に血が飛び散ったかと思って見回したが、なぜか家具や壁には血の跡がない。はて、どこで出血したのかしら・・・と後ろを見てまたも愕然。リビングには、私が使っているパーソナル・チェアがあるのだが、(我が家では「尊師の椅子」と読んでいる)そこに血溜まりができていた。今までにない激しい出血だ。幸い椅子は革張りなので、きれいに拭いたら跡は全く残らなかった。

ゴエモンを洗ったが、完全にはきれいにならない。いっそ血で染まった毛を全部刈ってしまおうかとも思ったが、これ以上醜い猫になってはあまりに不憫だという妻の意見で、そのままにすることに。

ふと気がついて、ピーターを探した。なぜかカーテンの後ろに隠れていたので引きずり出してまた驚いた。ピーターの右半身が鮮やかな赤色に染まっている。どうやら2匹で寄り添って椅子の上で寝ていたらしい。ゴエモンは、ピーターの右半身に頭を乗せるようにしていたのだろう。

あまりに赤い色が鮮やかに綺麗なので、しばらくこのままにしておくか、と妻に提案したところ、即座に却下されてしまった。仕方なくシャンプーをする。当然、またもや「ば−お。ば−お。」である。えーい、やかましい。

ゴエモンの体重は、発病前は3.3kgだったが、今では2.4kgにまで落ちてしまった。実に3割減である。食欲は旺盛でよく食べるのだが、やはり栄養は全て癌にとられているのだろう。大きくなるのは癌ばかりだ。

その後ひどい出血はおきていないが、いつまた同じ様なことになるか判らない。だから、朝起きると、心の準備をしてからゴエモンの顔を見る様に心がけている。もう二度と「ぎゃあ」などと驚かないように。

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