8.世界一過酷な成人式

成人として認知されるために行わなければならない通過儀礼は世に数々あるが、中でも最も過酷な儀式を経なければならなかったのは、アメリカ・インディアンのマンダン族の若者だろう。彼らが一人前の戦士として認められるには、それはもう尋常ではない忍耐力と体力が必要だった。

マンダン族は19世紀初頭、ミズーリ平原に暮らしていた狩猟民族で、彼らのうちの若者は、「オ・キー・パ」と呼ばれる試練に耐え抜いて初めて一人前の戦士として迎えられた。その内容は次のとおり。

  1. まず、儀式に先立ち若者は飲まず食わずで4日4晩を過ごさなければならない。この間、睡眠も一切とってはならない。これがすむと次に彼は美しく装飾された衣装をつけ、体中に化粧を施して儀式が行われる小屋へと入る。

  2. 中には呪術師がいて、彼は若者の胸と肩からノコギリのような歯がついたナイフで肉を切り取り、その穿った穴へ木串をつきとおす。ちょうど両方の鎖骨の下あたりの肉を木串が貫くような格好になる。

  3. 次に呪術師は、その木串の両端に丈夫な革ひもを結びつけ、天井の梁から若者の体を吊り下げる。このままでは苦痛も大したことはないので、若者の足には錘が付けられる。そして、若者は気絶するまで激しく、くるくると回転させられる。

  4. この責め苦から解放されたときにまだ若者が生きていれば、今度は彼の手に1本の斧が手渡される。彼は、その斧で自分の左手の小指を自ら切り落とさなければならない。

  5. 最後は手首にロープを巻き付けられ、疲れ切って倒れるまでサーカスの馬の様に円を描いて走り続けることによってスタミナをテストされる。

このすべてを見事に耐え抜いて尚かつ、その時に命があれば、この若者はりっぱな戦士として認められ、家族のもとへ帰ることを許されたのだ。

当然途中で息絶える若者も沢山いたはずだが、一体何人がこの儀式で命を失ったかは今となっては誰にも判らない。しかし、この後彼らは大抵のことは耐えられる人間になったことだろう。

またも胸くそ悪い話になってしまった。すまん。

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